なぜ、今コンサルティング組織にUXデザイン求められているのか。
DX検討段階で発生する現場への落とし込みや部署間のコミュニケーション課題など、従来のコンサルティングのアプローチだけでは解決の難しい課題に対処するため手法として、ワークショップとプロトタイピングのプロセスをご紹介します。
コンサルティングの「左脳的アプローチ」とデザインの「右脳的アプローチ」を融合させるために必要なマインドセットについても深掘りします。
INDEX
デザインアプローチが必要な背景
従来、課題解決はマーケティングのフレームワークやロジカルシンキングに代表される左脳的な分析が中心でした。マスプロダクションが通用する“作れば売れる”時代の考え方は徐々に廃れていき、多品種少量化し、モノ売りからコト売りへと変化していきました。そして、サスティナブル消費といったブランドや企業の価値観で商品やサービスが選ばれる時代においては、消費者の選択の動機は商品の良し悪しだけでなく、企業ビジョンと商品やサービスを使い続ける日常の利用体験全体にまで及ぶようになりました。また、企業活動が多様化する中ではSDG’sに代表されるような社会貢献にも影響は広がり、企業の姿勢やパーパスに共感できるか、企業活動との一貫性が求められるようになってきています。
こうした背景の中で、課題そのものが見えにくく複数の事象が複雑に絡み合って、個々の課題を解決する従来のアプローチだけでは不十分になってきました。そうした中で近年注目されているのがデザインアプローチによる改善手法です。デザインアプローチは、ものごとの価値の再定義から、イノベーション創出や社会全体の変革にまで、その範囲を広げ始めています。
デザインプロセスの価値
TISでは2017年にグループビジョン2026を策定し、お客様と一緒に社会課題を解決していくパートナーとなることを目指しています。
しかし社会課題の解決と言っても、答えは簡単には見つかりませんし、そもそも何が正解かわかりません。課題を捉え直したり、未来のあるべき姿を想像するため、デザイン思考をはじめとするデザインプロセスを本格的に取り入れる必要性を感じ、DX戦略の策定を行うDXコンサルティングビジネス部にUXデザインチームを立ち上げました。
UXデザインチームでは、従来のコンサルティング手法に、デザインプロセスを取り入れることで更なる付加価値が提供できると考えています。
デザインプロセスは、問題の本質を可視化し、解決策を導き出すための強力なツールであり、組織内の意思決定を大きく前進させる力を秘めています。
デザインプロセスは、ユーザーの視点やニーズを中心に据えながら、インサイトの発見、アイディエーション、プロトタイピング、デザインの反復、実装、検証という一連のステップから成り立っています。 このダブルダイヤモンドモデルの前半部分を「定義のダイヤモンド」、後半部分を「実行のダイヤモンド」に分けプロセスの整理を行っています。
特に前半部分の「定義のダイヤモンド」の解像度が高ければ高いほど、デザインプロセスは成功に近づくと言っても過言ではありません。
定義のダイヤモンドの進め方
- ユーザー感情の理解と可視化
課題の本質を深く理解するために、ユーザーペルソナの作成、インタビューなどのインサイト抽出の手法を活用、ユーザーの感情にアプローチします。 - ユーザー行動の理解と可視化
エスノグラフィや現地インタビューなどでカスタマージャーニーやストーリーボードなどの手法を用いてユーザーの実際の行動を記録し課題との結び付けを行います。 - 理想像の理解と可視化
得られている定性や定量データを元にワークショップでのアイディエーションなどで複数のアイデアを発散し、それらを絞り込んで優れた解決策を導き出しながらステークホルダー間のコミュニケーションを促進していきます。 - プロトタイプとフィードバック
アイデアを具体的な形にするためにプロトタイピングを行い、テストを通じて改善を重ねながら最終的なソリューションを導き出します。このプロセスを通じて、ステークホルダー間で共通の理解と共有を生み出し、意思決定をサポートします。
ここでは、特にデザインアプローチの中でも特に重要な「ワークショップ」と「プロトタイプ」の具体的な内容をご紹介します。
ワークショップの活用
ワークショップは、現場への落とし込みや部署間のコミュニケーション課題解決に特に効果的な手法です。 関係者が集まり、アイデアや意見を共有することで、共通の目標に向けた方向性を合意しやすくすることが可能です。 また、抽象度の高い課題に対しても散らばった意見を集約しつつ可視化することで新しい発見を促す効果もあります。
ワークショップの成功のためには、十分な準備とファシリテーションのスキルが求められます。 また、異なるバックグラウンドを持つ参加者が円滑にコミュニケーションできる環境づくりも重要な要素です。
以下の注意点を意識して計画をすることで、ワークショップをより効果的にすることができます。
- 目的設定とアジェンダの明確化
ワークショップの目的やテーマと進行計画を明確にし、参加者に事前に共有します。 - 参加者の多様性
多様な意見やアイデアを生み出すようために、様々な職位や職種、異なる視点を持つ参加者にできるだけ参加してもらうことが好ましいです。 この時、人数が多すぎてまとまらないとならないようにグループ分けも考慮します。 - ファシリテーターの役割
円滑な議論やアイデアの引き出しを促す役割を果たします。 適切なファシリテーション技術を駆使し、参加者の参加度や熱量を高めるようにします。
プロトタイピングの重要性
プロトタイピングは、アイデアやコンセプトを具体的な形にするプロセスです。
プロトタイプを通じて、アイデアを体験し、改善点や課題を発見することができます。 フィードバックを通じて、最終的な UI やプロダクトに近づくことができます。 プロトタイピングには、手書きのスケッチからデジタルツールを使用した高度なプロトタイプまで、さまざまなアプローチがありますが、進め方としては大きく変わりません。
- 要件定義
プロトタイピングの目的や範囲を明確に定義します。 具体的なユーザー体験や機能を想定し、プロトタイプの方向性を決めます。 - プロトタイプの作成
デザインツールを用いて、アイデアを具現化したプロトタイプを作成します。 手書きのスケッチやワイヤーフレーム、インタラクティブなデジタルプロトタイプなど、目的や予算に応じた最適な手法を選びます。 - ユーザーテスト
実際のユーザーにプロトタイプを使用してもらい、フィードバックを収集します。 ユーザーテストの結果を分析し、改善点や課題を洗い出します。 - フィードバックと改善
ユーザーテストの結果を基に、プロトタイプを改善していきます。 短い改善サイクルを繰り返すことで、最終的なソリューションに近づいていきます。
「左脳的アプローチ」と「右脳的アプローチ」の融合
デザイン思考を持つUXデザインチームの導入は、コンサルティング組織に多くの付加価値をもたらし、総合的なアプローチで顧客や組織の意思決定を大きく前進させる力になります。
コンサルティング組織におけるデザインチームの成功ためには、コンサルティングの左脳的な分析能力とデザインの右脳的な創造力を融合し、お互いのプロセスの理解が不可欠です。
両者の視点や共通言語を理解し、相互に尊重することで、顧客との優れたコラボレーションを実現することができると考えています。