クレンジングが肝!ぐちゃぐちゃ顧客データの名寄せのコツ<アットストリームコンサルティング共著コラム2-1>

シニアマネージャー
柿沼 信孝
2025.03.21

Vol1:顧客データのバラバラ管理は何が問題か<アットストリームコンサルティング共著コラム1>
Vol2 : 顧客データクレンジング
 Part1:データ登録の現状・クレンジングと名寄せの位置付け
 Part2: 顧客データクレンジングPart2:推進ステップ・ソリューション構成要素
 Part3: 顧客データクレンジングPart3:効果を測定する指標・事例・最後に

貴社の顧客データの精度はどの程度担保されていますか?
この素朴な質問にどれほどの企業、担当者が回答できるでしょうか。多くが回答できないと思いますが、そのような状況下で自信を持って意思決定し、指示を出す/指示を受けることは適切でしょうか、あるいは、精度は極めて悪いであろうと最初から判断し、集計・分析に活用することを諦め続けているかもしれません。前稿(①記事にリンク)で述べたような、データ統合の恩恵を受けるにも、また今後のAI定着社会において圧倒的な生産性向上の基盤を構築するためにも、データ精度の改善と継続的な維持から逃れることはできないと考えておくべでしょう。

データ登録の現状

顧客データの管理は長く続けるほど、想像以上に複雑で難しいことが分かりますが、一般的な企業におけるデータ登録の現状を見ていきます。 昨今のビジネス・業務環境では、顧客データは様々なルートから企業内の様々なシステムに入力されています。営業部門による日報や案件情報としての入力(CRM/SFAシステム)、取引発生に伴うマスタへの登録(基幹システム)、Webからの消費者による登録(ECサイトなど)、コールセンターでの問合せ対応結果の登録(CRM/CTIシステム)、イベントや展示会で交換した名刺情報の登録(名刺管理システム)、さらにはマーケティングキャンペーンを通じた収集された情報の登録(各種Web販売システム)、など入力ルートと登録の対象となるシステムは多岐にわたります。

【図1:データ入力ルートと登録対象システムの例】

図1に示すように、多様なルートから様々なシステムにデータが流入することで、同一顧客の情報が異なる形式や精度で登録される可能性が高くなります。

そして、部門や担当者によってデータ入力の基準が異なることも、大きな課題の一つです。例えば、以下のような不統一を皆さんも目にしたことがあるのではないでしょうか。

  • 氏名の表記(漢字の異体字、アルファベットの大小)
  • 住所の詳細度や表記(番地までか、建物名までか、ハイフンの全角半角、地名・ビル名の変更)
  • 企業名称の表記(企業名の略称か正式名称か、カナ・アルファベット表記の不統一、「株式会社」の略称か)
  • 役職や部署名の表記(役職名・部署名自体の変更)
  • 日付の型式(年月日・月日年の順序、スラッシュの有無)

これらの不統一は、単に見た目や理解速度の問題だけでなく、データの検索や集計・分析、さらには顧客とのコミュニケーションにも影響を及ぼします。

【表1:データ不統一の例】

表1が示すように、同一顧客の情報が異なるシステムで全く異なる形で登録されている可能性があります。このような状況では、正確な顧客把握やデータ集計ができず、同一人物かどうかの判断すら難しくなります。
 また、データ精度の観点では、上記のような不統一に加えて、最も基本的なところで以下のようなデータの入力誤り・漏れがあります。

【表2:データ精度に影響する入力パターン】

れらは人が介在する限り、発生をゼロにすることはできません。しかし、データクレンジングサイクルの仕組みを立ち上げることで限りなく小さくしていくことは可能です。

上記のように、顧客データの現状として、多様なルートからの様々な人による入力作業が存在することから、主に不統一と入力誤り・漏れの問題があります。

これらの問題は長期的に放置すればするほど切り分けが難しくなり、加速度的にデータの信頼性と有用性を低下させます。まずは、そのような事態を避ける、あるいは脱するためのデータクレンジングサイクルの取組みの重要な前提となる、顧客データの名寄せ・クレンジングについて詳しく見ていきたいと思います。

データクレンジング・名寄せの進め方

2-①.クレンジングと名寄せの位置付け

ここでは顧客データの精度を高めるための方法である、クレンジングと名寄せについて整理していきましょう。(クレンジングの一工程として名寄せを含む考え方も多く存在しますが、当記事においては分けて整理します)

<クレンジング>
クレンジングは、表1.にも例示した不統一データの統一と、入力誤り・漏れの修正作業です。

【表3:データクレンジングの例】

データクレンジングによって不統一や明らかな誤りや漏れを解消することができ、次の名寄せの段階における同一かどうかの判断精度があがります。

<名寄せ>
クレンジングされた顧客データにおいて、本来は同一顧客であるものの、何らかの理由によって異なるデータとして誤って重複登録された顧客を同一顧客と認識し、一つのデータに統一する作業が名寄せとなります。
 例えば、3つの異なるシステムから、一つの統合顧客データ基盤に連携した場合、名寄せをしないと顧客が3件存在することになり、また実績数字などを一つの顧客として管理することが極めて難しくなります。

【表4:名寄せ有無の例】

これにより、正確な顧客数の把握などデータ集計の精度を高めることができます。顧客数は事業計画策定の際に母数としても活用しますので、事業計画の精度向上にもつながります。

また、情報システム部門やDX推進部門においても、戦略策定・計画立案に向けた顧客データなどの提供・利活用を行う際に、自信を持って情報提供や意思決定を行うために、このような取組みは重要です。 第一回は、顧客データの置かれている状況と改善の方向性に触れました。次回、第二回はデータクレンジング・名寄せの進め方について整理してみたいと思います。


アットストリームコンサルティングについて

会計、顧客接点戦略、サプライチェーン、KPIマネジメント、IT戦略に強みを持つコンサルティングファーム。広域かつ多岐にわたる知識とスキルが求められる改革プロジェクトのコンサルティングを、広い知見と豊富な経験を有するプロジェクトマネジャーと個別分野専門のメンバーを組み合わせて、チームを編成しサービス提供。
TISビジネスイノベーション事業部のパートナーとしても、協業してお客様にコンサルティングサービスを提供。会計、顧客接点戦略、サプライチェーン、KPIマネジメント、IT戦略に強みを持つコンサルティングファーム。広域かつ多岐にわたる知識とスキルが求められる改革プロジェクトのコンサルティングを、広い知見と豊富な経験を有するプロジェクトマネジャーと個別分野専門のメンバーを組み合わせて、チームを編成しサービス提供。
TISビジネスイノベーション事業部のパートナーとしても、協業してお客様にコンサルティングサービスを提供。
https://atstream.co.jp/atstrem-consulting.html

共著者紹介

鷲野 真人(アットストリームコンサルティング株式会社)
株式会社ワコールを経て、アットストリームコンサルティング株式会社へ参画。

専門
業務プロセスの診断と改革の企画・立案・実行プロジェクトの支援
主に製造業における計画、予測、在庫・物流管理業務プロセスの企画・立案・実行支援 KPIマネジメント等の経営管理制度の企画・設計と導入・定着化支援

兵頭 卓(アットストリームコンサルティング株式会社)

専門
顧客接点強化(CRM変革)
データ/AI活用による各種効率化・高度化
新規事業開発などワークショップ設計・実施支援


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この記事の執筆者
柿沼 信孝
Nobutaka Kakinuma
プロフィールを見る

2003年
SIerにてシステムエンジニアとして従事
2006年
コンサルティングファームにてITコンサルタントとして従事
2012年
マーケティング支援会社にてSaaSプロダクトマネージャーに従事
2023年
TIS入社

専門

システム企画構想
業務変革、改革構想策定
マーケティング戦略策定
デザイン思考を活用した組織変革