アジャイルとマイクロサービスの関係性とは?相性の良い理由と導入のポイント

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宮﨑 勇輔
2025.03.10

アジャイルの導入効果をいまひとつ感じられてないということはありませんか?この理由にシステムのアーキテクチャが関係しているかもしれません。従来のモノリシックなシステムでは柔軟な対応が難しくなることがあります。「マイクロサービス」を導入することで、アジャイルの特性を最大限に活かし、開発スピードと柔軟性を向上させることが可能です。本記事では、アジャイルとマイクロサービスの関係性を深掘りし、両者を組み合わせるメリットについて解説します。

アジャイルに適したアーキテクチャとは

アジャイルでは、継続的なデリバリーと迅速な変更が求められます。しかし、従来のモノリシックなシステムでは、以下のような課題が生じることがあります。この結果、対応までに時間を要してしまい、継続的なデリバリーや迅速な変更が難しくなってしまいます。

• 影響範囲が広い:小さな変更でも、システム全体のリリースが必要になる
• チーム間の調整が必要:複数チームにまたがるため、チーム間の調整に時間がかかる
• スケールしづらい:特定の機能だけをスケールアップするのが難しい

これらの課題を解決するために、マイクロサービスアーキテクチャが効果的な選択肢となります。

マイクロサービスとは?

マイクロサービスの基本概念

マイクロサービスとは、システム全体を小さな独立したサービスの集合として構築するアーキテクチャです。各サービスが独立して開発・運用され、APIを通じて連携します。これにより、開発スピードの向上やスケーラビリティの確保が可能になります。

例えば、ECサイトのシステムをマイクロサービス化すると、以下のように分割できます。

• 商品管理サービス(商品の追加・編集・削除を担当)
• 注文管理サービス(カート・決済機能を担当)
• ユーザー管理サービス(ログインやユーザー情報の管理を担当)

マイクロサービスのメリットとアジャイルとの関係性

1. 独立したデプロイが可能

マイクロサービスでは、個々のサービスごとに独立してデプロイできるため、頻繁に行われる変更を迅速に本番環境へ反映できます。これにより、開発スピードが向上し、継続的デリバリーが実現しやすくなります。これはスプリントによる継続的なリリースを目指すアジャイルの考え方と通じる部分になります。

2. 柔軟なスケーリングや技術適用が可能

マイクロサービスを活用すると、システムの特定の機能のみをスケールアップすることが可能になります。例えば、ECサイトの検索機能に負荷が集中した場合、検索サービスのみをスケールアップすることで、リソースを最適化しつつパフォーマンスを向上させることができます。また、サービス毎に独立しているため、新しい技術を特定のサービスに適用させることが可能です。変化への柔軟な対応を可能にするという点でアジャイルの考え方と一致する部分になります。

3. チームの自律性を向上

モノリシックなシステムでは、異なるチーム間での調整が必要となり、開発スピードを低下させる要因になります。しかし、マイクロサービスを導入することで、各チームが独立して開発・デプロイできる環境を整えることができます。これはアジャイルで求められる機能横断的かつ自己管理なチーム(自律したチーム)の組成を後押しします。

マイクロサービス導入時の課題と解決策

1. 適切なサービス分割

マイクロサービスは複数のサービスで構成されることから従来よりも複雑な設計になることが考えられます。細かく分けすぎると複雑になり、逆に大きすぎるとモノリシックな構造に近くなってしまいます。これでは前述のメリットを享受できなくなってしまいます。そのため、マイクロサービスを導入する際は適切なサービス分割が重要です。この課題を解決するには、ドメイン駆動設計(DDD) を活用し、ビジネスロジックに基づいて適切な境界を定めることが考えられます。

2. 運用・監視の複雑化

マイクロサービスの導入により、複数のサービスが相互に連携するため、システム全体の監視や運用が複雑化します。これを解決するには、システム状態の可視化をリアルタイムで行うことが重要です。これには分散トレーシングを活用することが考えられます。分散トレーシングは、サービス間のリクエスト処理を記録し、処理経路を可視化するシステムです。一連の処理の流れが分かるようになるため、障害発生時の原因特定に役立ちます。

3. データの一貫性の確保

マイクロサービスでは、各サービスが独立したデータベースを持つため、データの整合性を確保することが課題になります。特に分散トランザクションの管理が難しくなります。この課題に対しては、Sagaパターンを活用し、結果整合性を担保することが考えられます。

4. テストと効率化

モノリシックなシステムでは、一つのコードベースに対してテストを行えますが、マイクロサービスでは各サービスが独立しているため、単体テストからE2Eテストを誰が、どこまで、どのような観点で確認するのか等、サービス間および全体で認識を合わせることが重要です。また、リリース物が増えると手作業では行えないボリュームになります。Jenkins等を用いた自動化によって効率化することが考えられます。

自動化を考える際には「テストピラミッド」を参考にすることができます。テストピラミッドは、自動化されたテストケースの理想的な比率をピラミッドで表現したものです。自動化されているテストの量は、E2Eテストよりも統合テスト、統合テストよりも単体テストの方が望ましいということを表しています。これは単体テストの方が、テストケースの作成と実行にかかるコストが低く、実行速度と決定性(毎回安定して実行される度合い)が高いからです。E2Eテストになるとテスト範囲が広く、メンテナンスや実行に時間を要します。したがって、テストの自動化を進める際、まずは単体テストから着手することを検討するとよいでしょう。

まとめ

マイクロサービスを導入することでサービス毎の独立したデプロイやチーム組成が可能になります。これは自律したチームによる継続的なリリースが求められるアジャイルとの親和性が高いです。最適な形で組み合わせることで、それぞれの特性を最大限に活かし、開発スピードと柔軟性のさらなる向上が可能になると考えています。


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この記事の執筆者
宮﨑 勇輔
Yusuke Miyazaki
プロフィールを見る

2022年 TIS入社
アジャイルのスクラムマスターや研修講師に従事し、ハイブリッド型プロジェクトのPMOリーダーも担当。
アジャイルとウォーターフォール双方の知見を活かし、組織のプロジェクト推進を支援。前職では、PLMシステムや
プロジェクト管理・原価管理システムの導入支援に従事し、プロジェクトマネジメントのコンサルティングを
通じて業務効率化と組織最適化を支援。

専門

アジャイル開発
プロジェクトマネジメント