事例レポート|東京都立大学にて学生アイデアソンを開催しました

シニアマネージャー
阿部 一彬
2025.02.06

東京都公立大学法人より委託を受け、東京都立大学(以下、都立大)にて「5G活用アイデアソン2024」を2024年12月8日に実施しました。本アイデアソンは有志で応募いただいた学生の皆さま17名に参加いただき、「自律走行ロボット」と「XR・デジタルツイン」をテーマに、5Gを活用したユースケースのアイデアを検討・発表しました。
 TISでは企業様向けのアイデアソンを数多く実施していますが、学生を対象としたアイデアソンについては経験が少なく、今後の未来を担っていく学生の皆さんの独創的なアイデアに触れ、産学連携の意義を改めて認識する機会となりました。

5G活用アイデアソン2024 Create the Future -よりよい未来を創造する-

開催の背景と目的

東京都が策定した「『未来の東京』戦略」において南大沢エリアは「スマート東京」先行実施エリアに位置付けられています。Society5.0の実現に向け、5G環境を活用した先端研究を進めるとともに、研究成果を活かし大学発ベンチャーやスタートアップの支援を促進することが掲げられています。都立大では令和2年度に南大沢キャンパス及び日野キャンパスにローカル5G環境を整備し、この環境を活用した研究・実証実験の取組を進めています。都立大では、南大沢及び日野キャンパス広域をカバーするローカル5G環境を今後、「都立大のプレゼンス向上」、「『大学版・エリア版DX、Society5.0』の実現」及び「都民の QOTL(Quality of Town Life)の向上」を目指して活用していくこととしています。その中の取組の一環として、学生の柔軟な発想と先端的なシーズを有するスタートアップ企業をはじめとする民間企業や研究機関等の知見を合わせて新たな5Gのユースケース創出および大学発ベンチャー設立等の機運醸成を目的とし、企業から提供された技術について5G技術を活用した新しいアイデアを模索するアイデアソンを実施しました。

協賛いただいたメンター企業の製品・サービスについて新しい体験を考える

アイデアソンは、5Gの活用という大テーマのもと「自律走行・遠隔操作ロボットの新しいユースケースを創出する」と「XRやデジタルツインを活用し、情報の可視化による新しい体験を考える」の2つのテーマで、東京都立大学、東京都立産業技術高専、東京都立産業技術大学院大学の学生17名が参加しました。

アイデアソンには、株式会社Piezo Sonic、株式会社ホロラボ、株式会社NTTコノキューの3社にメンター企業として参加いただきました。アイデアソンのテーマは「株式会社 Piezo Sonic」の遠隔操作型自律走行ロボット「Mighty」と「株式会社ホロラボ」のデジタルツインプラットフォーム「torinome」について、5Gとの組み合わせによる新しいユースケースを検討しました。

今回のアイデアソンでは、革新性(アイデアの新しさ)と実現性(アイデアが実現できそうか)のバランスが釣り合うように、個人ワークでは革新性を求めたアイデア出しと、グループワークでは実現性を確かめるためのアイデアの検討・深堀を行うように設計を実施しました。

複数のメンバーが意見を出し合い、様々な角度からアイデアを検証し、1人では考えが及ばないようなアイデアとして発展させていく過程は、グループワークならではのプロセスです。特にメンバーの多様性が高いほど、この傾向は顕著になります。そのため、議論がより活発に進むように、所属・文理・学年が分散するようグループ分けを実施しました。
 今回は、自律走行ロボット3チーム、XR/デジタルツイン2チームによるアイデアソンを実施しました。

アイデア創出が初めての学生でもアイデア出しができるよう生成AIを活用

アイデア創出の経験が少ないと思われる学生がゼロからアイデアを検討するのは難しいため、TISで作成したプロンプトを用いて、生成AI(ChatGPT-3.5)をアイデア出しの補助ツールとして活用しました。

アイデア出しには2種類のプロンプトを用いて実施しました。まずは①「誰向け」にどのような「課題」を抱えているかを洗い出し、②その課題を解決するための「解決策」をワークシートに記載していくことにより、知見の無い業界・領域であっても考えるヒントを簡単に得ることができ、学生主体で活発なアイデア出しを可能としました。

アイデアの実現性を高めるため、全体像を可視化する「Business Origami®」を活用

アイデアを深めるため、アイデアの全体像を視覚的に検討することができるBusiness Origami®をグループワークで活用しました。通常ビジネスモデルを検討する際には、多くの要素を検討しなければなりませんが、Business Origami®でアイデアの全体像を一度可視化することで、アイデアを実現する上での検討要素を洗い出すことができ、深ぼり具体化するべき要素を明確にすることができます。

また、Business Origami®は、オリガミの名の通り、実際に手を動かしながらアイデアを検討できるため、どのグループも一つのテーブルを囲んで積極的に意見交換し、活発なディスカッションが実施できました。

※「Business Origami®」は、株式会社日立製作所の登録商標です。

アイデアのプレゼンテーションと審査

5つのグループがそれぞれのテーマに基づいたアイデアを発表しました。
【各グループのアイデア】

XR
・グループA:視覚、聴覚の他、味覚、嗅覚まで訴求するXRでの温泉地体験
・グループB:AI医師による診断説明や検査結果のアドバイスを行うXRでの医療改善サポート

ロボット
・グループA:カメラや様々なセンサーを活用した自律走行ロボットでの見回りサービス
・グループB:自律走行ロボットの移動販売や移動カフェとしての活用
・グループC:通行人の属性情報をもとに広告を出しわける自律走行ロボットでの移動広告

学生のアイデアは、「課題解決(誰のどんな課題をどう解決するか)」、「アイデアの魅力度(新しいアイデアか、実現したら魅力的か)」、「5G活用(5Gの特徴を活かせているか)」、「実現可能性(実現可能なアイデアか)」、「プレゼンテーション(わかりやすく発表できているか)」の5つの観点で審査され、ロボットテーマでは「自律走行ロボットによる移動広告」、XRテーマでは「XRデバイスを活用した温泉地体験」が優秀アイデアとして選ばれました。

審査員からは、学生たちのアイデアに対する称賛とともに、今後の改善点についてのフィードバックがありました。特に技術を活用して、どのように課題解決に結びつけるかという点でのアドバイスが多く、参加者の皆さんは今後に向けての学びを得られたのではないかと思います。

まとめ

今回のアイデアソンは、初対面の学生たちが集まり、各自で考えたアイデアを選び、それを磨き上げて発表するというハードルの高い内容だったと思いますが、参加いただいた学生の皆さんは非常に意欲高く取り組んでいただき、レベルの高いアイデアが続出する会となりました。大学と企業の連携により、新しいアイデア・ユースケースを生みだせる可能性も示せたのではないかと考えています。

現在、優秀アイデアを受賞した学生と株式会社Piezo Sonic、株式会社ホロラボの各社の間で2月に実施予定の実証実験の準備を進めています。実証実験内容についてもこちらのコラムでご報告したいと思いますので、続報をお待ちください。

ここまでご覧いただき、どうもありがとうございました。
是非、ご興味のある方は以下サービスよりお問合せ下さい。


■関連サービス

・生成AI活用アイデア創出1DAYプログラムhttps://www.tis.jp/service_solution/UX_design_consulting/genai_program

・新規事業開発ワークショップhttps://www.tis.jp/service_solution/new_business_dev/workshop_type_support

■関連記事

・搬送用自律移動ロボット | AMR と製品開発 Piezo Sonic
https://www.piezo-sonic.co.jp/mighty

・torinome | 株式会社ホロラボ | HoloLab Inc.
https://hololab.co.jp/torinome

・MiRZA | 株式会社 NTT コノキューデバイス | NTT QONOQ Devices, inc https://www.devices.nttqonoq.com/mirza

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この記事の執筆者
阿部 一彬
kazuaki abe.
プロフィールを見る

2012年
TIS入社
2015年
コンサルティング部門にて経営・業務コンサルティング
2018年
ペイメントサービス事業企画・事業推進
2022年
コンサルティング部門にてUXデザインコンサルティング

専門

DX企画構想
UXデザインコンサルティング
事業企画・事業運営
経営管理
業務改善