現代は生成AIなどの先進的なデジタル技術が加速度的に進歩・発展しており、第四次産業革命の実現が現実味を帯びつつあります。この第四次産業革命の実現を支える技術のひとつとして注目を集めているのがロボティクスです。
本コラムではサービスロボット普及の背景や、人々の仕事や暮らしに与える影響、そしてこれらを支えるために重要なポイントについて解説します。
INDEX
サービスロボットとは?
デジタルテクノロジーの発展によって、工場などでは人間と隔離された環境で動作する「産業用ロボット」を活用し、作業を自動化させる取り組みが浸透してきました。その一方で、産業用ロボットとは異なり、主にサービス業で使われるロボットを指し、公共空間や住居で働き、人間と動作空間を共有するロボットのことを「サービスロボット」と呼びます。
サービスロボットの種類では、例えば、オフィスビルにおける受付案内ロボット、商業施設における施設内の飲食店や売店から商品を運ぶデリバリーロボット、人が生活している空間でコミュニケーションを図りサポートするコミュニケーションロボット等が一般的にあります。また特殊用途として、災害時の人命救助作業をサポートするロボットや農作業用ロボットも最近注目されています。
サービスロボットが普及する背景
ロボット自体は、人の作業を助けるツールとして以前から存在していました。ただ、昨今注目を浴びているのには、社会的な背景があります。
現在、日本では少子高齢化が進んだ結果として、人手不足が慢性化しており、深刻な社会問題となっています。
厚生労働省の「令和4年版 労働経済の分析」では、生産活動の中核となっている15歳以上65歳未満の、いわゆる「生産年齢人口」は、今後も当面減少していくと推測されていることからも、そのリスクは明白です。
労働力不足による、労働者の人件費の高騰や、新型コロナウイルス感染症の流行で、人との接触機会が制限されたことも一因となり、サービスロボットの活用は拡大し続けていると考えられます。
サービスロボット導入のメリット
サービスロボットを導入すると、人間にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。
人は24時間365日働き続けられませんが、ロボットならバッテリー充電時間を除くと休みなく稼働させられるため、労働力不足、人手不足を解消することができ、人材募集の手間やコスト、残業代などの人件費も削減することができます。人件費を削減できれば、ほかの事業に資金を運用できるなど、経営面での利点もあります。それでいて、常に安定した高品質のサービスを提供できるため、生産性向上、顧客満足度向上にもつながっていきます。
ロボットが未来の働き方や生活に与える影響
産業用ロボットは第四次産業革命の実現を支える技術として、製造分野で広く普及しています。他方、サービスロボットはオフィスビル、商業施設や飲食店、エンターテインメント施設、さらには一般家庭でも利用されつつある技術です。こうしたロボットの普及は、人々の未来の生活において以下のような変革をもたらすと期待されています。
清掃、警備、配膳/配達業務をロボットが担う時代に
ロボットによる仕事の置き換えが進んだ結果、未来の公共空間では清掃・警備業務のみならず、運搬業務などを行う搬送ロボット、案内誘導業務を担うコミュニケーションロボットが多くなると予想されます。未来の公共空間はこれらのロボット活用を前提に、先進技術と融合したロボットフレンドリーな環境に整備され、ロボットはその中で自律走行機能を使って動き回ります。
たとえば、さまざまな設備と関連付けられたロボットは、エレベーターやセキュリティ付き自動ドアなどと連携して階数を移動しながら仕事することもできます。配達業者が運んできた荷物を1階のロビーで受け取り、それを3階の配達先に届けるなどです。あるいは、複数のロボット同士が連携し合って、荷物の仕分けや積み下ろしなどの仕事を分担することもあるかもしれません。
このように館内を自由にロボットが動き回る状況を考えると、人とロボット、あるいはロボット同士が衝突しないように、一種の交通ルールを策定することも必要になるでしょう。たとえば、衝突しやすい曲がり角では一旦停止する、幅の狭い廊下は一方通行にするなどです。
導入事例
ここでは、実際にTIS社が手がけている2つの最新事例について紹介します。
TIS豊洲オフィス
豊洲にあるオフィスをロボットビルディングの起点とし、社会実装試行に取り組んでいます。たとえば受付案内業務では、受付から案内、ドリンクの配膳や下膳まで異なる機種のロボットを連携させることで、人の業務を代替しています。
特に清掃や案内、運搬、警備といった深刻な人手不足に悩む業界には、こうしたWithロボットによる新しい働き方を実現できることが、大きなメリットとなります。近い将来、ロボットプラットフォームが浸透し、異機種・複数台のロボットと共生したスマートオフィスが当たり前になるかも知れません。
東京ミッドタウン八重洲
大型複合ビル「東京ミッドタウン八重洲」において複数のサービスロボットが導入され、その運用プラットフォームとしてTISの「 RoboticBase®」が採用されています。また、TIS はロボットサービスプロバイダーとして「 DX on RoboticBase®」で導入運用を支援しています。
家庭用ロボットが高齢者をサポートする日も遠くない?
2030年代には、ロボットは個々人の居宅でも利用が広がっていると想定されます。そうした中でロボットの役割として特に重要になってくるのが、急増する高齢者のサポートです。国の予測によれば、2035年には日本の高齢化率は35%を超え、3人に1人以上は65歳以上という状況になります。働き手も現在より減少していく中で、高齢者を支えるマンパワーをどのように確保するかという問題に対して、ロボットの活用はその解決策のひとつになるでしょう。
たとえば、前述の「荷物を配達業者から受け取って建物内の配達先へ届ける」という運搬ロボットは、マンションなどでも活用できます。荷物やデリバリー品などを受け取る仕事をロボットが代替してくれるとしたら、体の不自由な高齢者にとっては助かることでしょう。そもそも宅配の仕事自体、ロボットが行うようになっていることも考えられます。労働人口が不足していく中では、ロボットによって仕事を自動化していくことは非常に重要です。
また、健康寿命の延伸という点でもロボットの活用は効果が見込めます。日頃の健康管理や話し相手などを務めるロボットが普及すれば、より健康的な生活習慣を身に付けたり、病気の早期発見をしたりすることが可能です。天気のいい日には外出を勧めるといった、行動変容を促すコミュニケーションをロボットに取らせることもできます。このような仕方で一人ひとりの健康寿命の延伸を図ることは、医療費などの軽減につながります。
人とロボットが共存するために必要なこと
ロボットと人が協働するためのサービスモデル
ロボットはネットワークを介してシステムと連携することによって、柔軟に働くことができるようになります。したがって、複数の異なるロボットが、都市OS、建物OS、SNSなどがシームレスに連携できるサービスモデルを構築していくことが重要です。なお、都市OSとは、物流や交通をはじめとする都市機能を成立させるためのシステム基盤で、サービス間の連携や多種多様な都市データの提供を行う仲介者としての役割を果たします。
ロボットと人が共生するためのルール作り
サービスロボットをオフィスや住居、またエリア全体で効果的に機能させるためには、建物や都市の設計がロボットの特性を考慮したものになるようにガイドラインを整備することが重要です。たとえば、「建物の通路幅をロボットのサイズを念頭に置いたものにする」「道路の勾配がロボットの登坂性能を超えないようにする」ことなどが挙げられます。
また屋内外問わず多くのロボットが動き回る環境をつくっていく中で重要なのが、動くロボットの衝突や事故を避けるためのリスクアセスメントです。現状では複数のロボットが同じエリアで稼働している実例は少ないので、安全性や効率性に対する問題は表面化しておりませんが、多くのロボットがあらゆるところで強制する社会では、ロボット同士の動線が干渉しないようにするなど、衝突のリスクを回避する等の仕組みの充実が必要となります。
ロボットと人のギャップを埋めるロボットプラットフォーム
これまで述べたように、未来は人がロボットと共に協働・共生する社会であることは間違いありません。しかし、しばらくの間はロボット機能の多くは、特定のタスクや作業のみに限られています。一方、人間はマルチに作業をこなせるため、作業レベルに差が生じます。人とロボットが協力して業務を推進するためには
- 異なる機能を持ったロボットや、建物設備や、外部システムと組み合わせる
- 業務やタスク間を連携させる
- 人とロボットの役割を分担する
といったようなソフトウェア対策も重要になってきます。実際にこのような機能を搭載したロボットプラットフォームの導入が急速に増えています。
まとめ
少子高齢化がより深刻化する未来の日本社会においては、ロボットの活用がさまざまな社会問題の解決のために非常に重要になってきます。人間の暮らしにロボットが寄り添っている未来は、そう遠くはありません。より快適な未来の実現には、ロボットと共存するためのプラットフォームやルールの整備が鍵となります。
プレスリリース
「東京ミッドタウン八重洲」にデリバリーサービスなど複数サービスロボットの運用を可能にする
サービスロボットのプラットフォームを利用してDXを実現!
デジタルトランスフォーメーション チャンネル
RoboticBase®の導入が決定~日本橋室町三井タワーで実証実験を実施~
人とロボットが共存する街づくりとは? 実現への展望を解説
ロボットで未来の生活はどうなる?家事や仕事への影響はある?
DX on RoboticBase®
https://www.tis.jp/service_solution/dxrb/