TISでは、BtoB新規事業開発コンサルティングサービスで様々な新規事業開発の支援を行っています。一般的なコンサルサービスでは、新規事業開発を経験したことがないコンサルが支援することが多いため、絵に描いた餅になりがちで、フィジビリティに課題があると考えています。一方、当社は自社事業開発に積極的であり、方法論と経験の両方を備えるサービスを提供しています。実際の自社の事業開発を例に事業企画からPoCにかけた成功のポイント3点を紹介します。
INDEX
TISにおける事業開発
TISのビジネスイノベーションユニットでは、お客様に対するBtoB向けの事業開発コンサルティングを提供しています。
世の中には多くの新規事業立上支援サービスや方法論がありますが、ほとんどがBtoC向けの内容で、BtoB向けの事業立上支援は多くありません。
BtoBビジネスの新規事業は、BtoCと比べて、業界特有の商習慣やルールがあり、顧客は経済合理性を重視する傾向があるため、リサーチやマネタイズの仕組みが非常に重要になってきます。特に最近ご相談の多い社会課題解決型の事業開発においては、十分に現状を知っておかないのと事業化が難しい局面が多々あります。
当社の特徴は、企画倒れにならないフィジビリティを重視した新規事業立上のご支援です。例えば、リサーチにおいてデスクトップ調査だけでは十分ではないケースが多いため、業界知見者を中心に直接インタビューを行い、リアルな市場を把握します。企画検討においても、お客様の立場や目的に応じて実際に事業化可能な企画立案を支援します。また、当ユニットにはAI/データ分析やロボットなどの先進技術のスペシャリストが在籍しており、PoC以降でもお客様の事業化を推進できる体制を整えています。
事業企画におけるポイント
コンサルティングサービスを提供する一方で、TISでは自社サービス開発を推奨しており、我々も新規事業開発コンサルティングを行っているメンバーを中心に自社サービス開発を行っています。自社の事業開発のリアルな経験をコンサルティングサービスにも活かしています。
当社では数多くの事業を立ち上げていますが、そのうち、現在開発中であるSalesMap(仮称)の事業企画からPoCまでの実際の経験をもとに新規事業開発におけるポイントをご紹介した いと思います。
Point1|事業アイデアは、ひらめきだけではない
様々な方から「事業アイデアが思いつかない!」という声をよく聞きます。事業アイデアは”ひらめき”だけと思われがちなのですが、BtoBビジネスの新規事業はどちらかというと”ロジック”で導き出されると考えています。
現在開発中のSalesMapも”ひらめき”というよりも、業界をよく知り、業界のGains/Painsを理解したうえで、先端テクノロジーで解決できないのか?という順で出てきた事業アイデアです。
事業アイデアを検討する段階では、まず”ビジネスにおけるコロナ禍の変化”というテーマに絞り込み、クイックにリサーチをかけ、メンバー間でディスカッションをしました。結果、変化が大きいと思われるテレワークの浸透=働き方の変化ということに着目しました。
コロナ禍では多くの働き方の変化がありましたが、特にテレワークという変化を身近で感じていたため、TISの業種であるSI業における変化がどのようなものがあったかを社内でヒアリングしていきました。
エンジニアはもともとテレワークが多く、変化は大きくなかったのですが、営業職においてはリアル商談からオンライン商談への移行という大きな変化がありました。営業職の方に色々話を聞いてみると、オンライン商談の移行により”空気を読む”ことが難しくなり営業活動がうまくいっていないという課題を発見しました。
この課題が、当社のみの課題の可能性もあるため、幅広くヒアリングをしてみたところ、この悩みは他社も同じで、特に無形商材を扱っている企業が抱えていることが分かってきました。
Point2|初期案に固執せずに新しい事実に基づいたピボットを
分かった事実から初期案としては”「空気が読める」オンライン商談”ということで、オンライン商談の映像・音声等を解析し、顧客感情をリアルタイムに表示して、リアル以上に顧客を見える化することをコンセプトとしました。
本コンセプトのターゲット顧客を考えていくと、顧客反応が大事である高級材×無形商材の分野(金融、コンサルティング等)がターゲットになると仮説を立て、更なる調査を進めていきました。
ところが、色々な業種の営業と話してみると反応は良いのですが、「買うか?」という問いに対しては「明確な効果がないと会社では導入難しいかも」という微妙な反応が返ってきました。ユーザがお金を出してでも欲しいものがビジネスとなりうるため、スケールするビジネスにはならないと考え、決裁権のある責任者をターゲットにヒアリングを進めていきました。 すると、営業責任者としては、担当者とは違った課題があることが調査からわかってきました。彼らは、「オンラインになり商談数が多くなったため、商談の情報収集に時間がかかり、商談状況の把握が困難」「営業担当者からの報告が主観が入っているのであてにならない」と商談管理に課題を感じていることがわかり、この課題解決に対して、お金を払ってでも解決したいというニーズを発見することができました。
そのため、初期案に固執せずに事業コンセプトを少しピボットし、「営業管理者が商談を自動で把握できる」をコンセプトにビジネスモデル検討を進めていきました。商談を見えるようにするというコンセプトは変わっていませんが、ターゲットは「担当者」から「責任者」に変化、提供価値は「いち商談の詳細な可視化から「組織内の全商談の自動収集及び可視化」に変化しています。おそらく、最終的なプロダクトとしては、一見同じ提供価値に見えるものになると想定されますが、販売戦略やエコシステムを組むうえでは大きな変化となり、我々としては良いビジネスモデルにピボット出来たと考えています。
このように、単純に提供する機能だけを考えるのではなく、誰に対して、何の価値を提供し、どのようにお金をもらうのかを企画段階からしっかりとした仮説を持ち、PoCにいくことで、充実した検証ができます。
Point3|PoCは、開発メインではなく、顧客検証がメイン
PoCはProof of conceptの略であり、本来、コンセプトが正しいか検証するフェーズです。ところが、PoC=技術検証だと認識されている方も多い気がしています。
SalesMapはPoCが完了し、現在ローンチに向けて開発段階に入っていますが、コンセプト動画やMOCを作成し、顧客ヒアリングを重ね、良い評価を得られています。新規事業開発においては技術面にフォーカスされがちですが、それだけでは買ってもらえるサービスにはなれません。当社のPoCメンバーも技術精度にこだわりすぎていた時もあり、多くの方がハマる罠だと考えています。枯れた技術でも顧客が「欲しい!」と思ってくれればマネタイズ可能ですし、すごいけれど何につかうの?というようなサービスでは事業化は成功しないと我々は考えています。 SalesMapではTISグループの澪標アナリティクス社と共同で感情分析技術を開発(特許出願番号:特願 2023-001538)し、取り入れていますが、PoCの結果においても、顧客にこの技術力が評価されているのではなく、顧客のGains/Painsに刺さっていることが評価されているポイントです。最終的なプロダクトの出来次第ですが、顧客のGains/Painsに対応するプロダクトになれば、事業化の成功確率は高いと考えています。
さいごに|新規事業開発は思った通りにいかない
新規事業の開発は、思った通り進むことの方が少ないです。全く新しい領域だと仮説の精度も低いため、市場の声を聴き、ピボット、ピボットの繰り返しとなります。市場の声を聞けば聞くほど、その領域における解像度が高くなり、顧客に買ってもらえるビジネスになっていくと考えています。 我々も多くのクライアントの新規事業開発支援を行ってきましたが、粘り強く市場と向き合う方が成功をつかみ取っている印象があります。当社はこれからも社内外ともに新規事業開発を立上げ、よりよい未来づくりに貢献していきたいです