ビジネスにテクロノロジーを実装するためのUXデザイン

マネージャーコンサルタント
安東 英恵
2024.09.05

生成AIなどの新しいテクノロジーが登場し、それを活用した新しいビジネスの誕生や業務改善に期待が膨らんでいます。しかし、せっかくのテクノロジーでも使えるのが専門家だけという社会では性能を活かし切ることができません。多くの人が経験に基づいて使えるように設計し、専門知識がなくても活用できる必要があります。このテクノロジーと人間の接点を考えるのがUXデザインです。新しいテクノロジーや製品を使いやすくすることで、生産性の向上やビジネスゴールの達成を目指します。

テクノロジーの発展とUXデザイン

近年、生成AIや自動運転といったテクノロジーが物語の中だけのものでなくなり、日常生活で活用できるようになってきました。人間よりも賢いロボットや空飛ぶ車のある暮らしが実現することは想像に難くありません。

さて、夢物語だったテクノロジーが現実になろうとしている今、新しいテクノロジーをいかに人間にとって使いやすいものにするかという課題が登場しています。エクセルを使いこなすために関数やマクロを学ぶと言った、便利な道具を使うために人間が学習するというのが従来の在り方でした。しかし、これから使い慣れた道具にAIが搭載されたり、画期的なテクノロジーを搭載した製品がどんどん登場することを思うと、導入のたびにエクセルと同等の学習が必要になってしまっては大きな負担になるでしょう。「難しいから今まで通り手作業でやろう」と判断されてしまったり、一部の学習した人にしか扱えないようでは、テクノロジーは普及せず、生産性向上の芽を摘んでしまうことにもなりかねません。

そこで、人間の学習コストを減らしてテクノロジーを使いやすくするためのUXデザインのお話をしてみたいと思います。

「使いやすい」とは何か

新しいテクノロジーやサービスに出会った時、「これは便利だ!」「あまり役に立たない」と評価して、便利なら使い続け、そうじゃなければ使用をやめますよね。

では、どうしてそれはあなたにとって使いやすいのでしょうか?
必要な機能が揃っているから?最新技術を搭載しているから?
もちろんそういったスペックも重要な評価基準です。

それ以外にも、操作に迷うことがない、必要な時に必要なボタンが目に入る、小さな文字で長々と書かれた説明を読まなくてよいと言った、テクノロジーを使うのに支障がないインターフェースまで揃って初めて使いやすいと感じるのではないでしょうか。

通常、ユーザーは直接テクノロジーに意思を伝えることはできず、何らかのインターフェースを通じて操作します。ここで言うインターフェースとは、アプリやPCの画面を始め、ロボットとの会話やボタンを押したときの感触なども含めた、テクノロジーを操作する接点全般を指します。

テクノロジーが使いやすいかどうかは、テクノロジーをどれだけ自在に操作できるか、つまりインターフェースの性能に大きく依存することになります。

では、どうすれば使いやすいインターフェースが作れるのでしょうか?
その答えを導き出すためには、まずは「使いやすい」とは何なのか考えてみましょう。

自動運転を例にとってみると、急いでいる時には最短ルートを設定して走り出してくれるのが使いやすいでしょうが、気分転換に景色の良いルートを通って向かいたい時には、最短ルートが自動で設定されてしまうと使いにくいと感じるかもしれません。

使いやすさは目的、状況、使う人の経験など様々な要因によって変化します。目的や状況に合わせて何が最適かを見定める必要があります。

使いやすいテクノロジーの作り方

「どの人が、どういう時に、何を便利だと感じるか」を導き出すアプローチがUXデザインです。ユーザーの思考と行動を調査・分析し、ユーザーがビジネスゴールにつながる道の上を迷いなく歩けるように導きます。

UXデザインは、インターフェースがユーザーが思った通りの挙動をして、必要な時に必要な機能が目に入ることを目的として設計します。一番重要なのはユーザーが何を目的として何を考えてどう行動するのかを理解することです。リサーチやデータ分析してなどの定量調査で仮説を立て、インタビューなどの定性調査で背景にある事情を理解し、ユーザーがインターフェースに期待する役割を導き出します。

具体的な方法としては、まず、ユーザーが目的を達成することでビジネスゴールが達成できるような計画を立てます。例えば、生成AIを使った業務効率化であれば、ビジネスゴールは従業員の生産性の向上でしょう。そしてユーザーの目的は品質を保ったまま業務に掛かる時間を減らすことと設定できます。ユーザー目線に立って考えているとビジネスゴールを見失ってしまうことがあります。なので、最初にユーザーの目的達成がビジネスゴールの達成に寄与するよう設計しておきましょう。

次に、目的達成までにユーザーが取る行動とその時の思考や課題を洗い出します。課題は金額が高いので検討が必要というような費用面から、支払い手続きが面倒臭いといった感情面まで幅広く網羅します。ユーザーの行動や思考を知るには調査が有効です。アンケートなどの定量調査でどの辺に課題がありそうかの仮説を立てて、インタビューなどの定性調査でどうしてそれが課題になるのかの背景を探ります。こうしてユーザーが躓きそうな場所を予め把握することで、先回りして解決することができます。

ユーザーの行動や思考と躓きそうなポイントがわかったら、情報の整理の仕方を考えていきます。いつ何の情報を出すとわかりやすいか、どうグルーピングするとユーザーが理解しやすいかを考えます。また、事前に課題が見えている場合には対策も盛り込んでおきます。ユーザーに必要な時に必要な情報を提示し、困ったときには対応方法がすぐ目に入り、迷いなく目的達成まで進むことができると、そのテクノロジーやサービスは使いやすいと評価することができます。

この時、この製品を使うのは自分や開発チームではなくユーザーなので、評価はユーザーに委ねることが重要です。デザインの完成イメージがわかるものを作成してユーザーに見せて、迷わずに操作できるかを確認します。

ユーザーの行動に合わせて設計し、ユーザーに評価してもらうプロセスを数回繰り返すことで、ユーザーにとって使いやすいインターフェースを作ることができます。先述した通りユーザーはインターフェースを通してテクノロジーを扱うので、インターフェースを使いやすくすることで、テクノロジーを使いやすくユーザーに提供することができるようになります。

ビジネスとテクノロジーをつなぐUXデザイン

TISのコンサルティングチームでは、最新テクノロジーをビジネスに活用するためのご支援をしています。現場担当者を集めたワークショップを開催することで、全社でDXを推進して新しい仕組みを導入したが使ってくれない等の既存課題の抽出、解決策やテクノロジーの活用を考えるブレストを行い、ビジネスモデルマップやプロトタイプの作成を行い、プロジェクトの状況に合わせてUXデザインを柔軟に取り入れられるご支援をしています。

また、AIなどの最新技術に関する基礎知識の学習、自社の強みの発見、解決策を考えるワークショップなど、その時の目的に合ったコンテンツを組み合わせた1日体験プログラムもご用意しています。

賢いはずのロボットなのに話が通じなかったり、自動運転が気分転換のドライブを無くしてしまわないように、人間にとって使いやすいインターフェースをデザインし、未来のテクノロジーを便利にするお手伝いをいたします。


UXデザインコンサルティングサービス

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生成AI活用アイデア創出1DAYプログラム

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この記事の執筆者
安東 英恵
Hanae , Ando
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武蔵野美術大学卒業後、ファッションメーカーでグラフィックデザインやWEBデザインを経験して独立。独立後はスタートアップのサービス立ち上げや大企業の事業戦略など、上流工程でのUXデザイン支援に従事。
その後、エネルギー系スタートアップにて電力会社が展開するアプリの企画、デザイン、PMなど担当。
2023年、TIS入社。

専門

UX Designer